音俳句
2018年1月頃より俳句を始めました。
亀の歩みですが作るうちに音に纏わる俳句がいくつかできていて、
少しずつ紹介したいと思います。
(2022.11~2023.4お休み)
鶯の響きの余韻森深し
鶯の声のサスティンが長いとき、それは深い森である。
2020.5
ハンモック軋む鳥の音どこよりか
自然豊かな山の麓に佇む茶屋「宇都宮アルプスの森京屋茶舗」のテラスにあるハンモックに揺られながら軋む音と鳥の声のハーモニーに耳を傾ける。
2020.6
夏川へ釣りに入る人音もなく
鬼怒川の緩やかなポイントへ長い竿を手に静かに入水する釣り人。鮎釣りの季節だ。
2020.7
蜩を背中に残して家路つく
こどもの頃、帰る時間が近づくと蜩が鳴いていた。大人になった今でも蜩が鳴くとちょっと切ない気持ちになる。
2020.8
やはらかにカンテレ響く秋の雨
2019年の秋、カンテレ奏者のあらひろこさんと馬頭琴の嵯峨治彦さんが栃木市で演奏会をされた。小雨の音とカンテレが優しく混ざり合い、心地よい時間が流れていた。
2020.9
湧水の音澄み渡り秋気満つ
前出の「宇都宮アルプスの森京屋茶舗」の庭には湧き水がある。秋の空気は水の音さえも綺麗に響かせてくれる。
2020.10
天狼星瞬く山の霊集め
2019年11月、ギタリストの小川倫生さんと共演、彼のオリジナル曲「シリウス」を一緒に演奏させて頂いた。冬の透き通った空気の中、星々が瞬き共鳴する。大好きな曲だ。
2020.11
ストーブに置きたる鍋の蓋ことり
冬になると母はストーブ料理をよく作っていた。
やかんのシュンシュンという音と、鍋の蓋が時々コトっという。生活音も立派な素晴らしい音楽である。今では父がストーブ料理を作っている。
2020.12
軽やかに霜踏み鳴らす子の笑顔
ぱりぱりと音が聞こえてきそう。
地面に霜が降りていると踏みたくなりませんか?
2021.1
酸葉噛みハミングしつつ家路かな
小学生の頃スカンポを手折って齧りながら歩いた帰り道。歌を歌ったり、リコーダーアンサンブルしたり…楽しい帰り道。
2021.2
しとねへと光の射して春の鳥
鳥の声で目覚める春の朝。
2021.3
木蓮を揺らし去り行くつがい鳥
鳥がどこにいるかは枝や葉を揺らす音ではっと気が付いて目をやることが多い。もっと見たいと思っても、すぐに飛んでいってしまう。
2021.4
麦の秋一面歌ふ風調べ
夏季語の「麦の秋」。秋は「実る」という意味だそうです。風が吹き渡り、一面の麦たちはまるで合唱しているよう。
2021.5
沢の音と虫の声聞くテント泊
キャンプでは家とは違う環境音が楽しめる。
自然との距離が近くなり、耳も研ぎ澄まされるような気がする。
2021.6
雨粒の拍子を数ふ文月の夜
雨粒の音は何拍子かな。
数えて過ごす眠れぬ夜。
2021.7
合唱の声は彼方へ月涼し
2020年の夏、白馬の野原で満月を眺めながら何故かフィンランディアを友と熱唱した。
月は歌声に応えるように雲から顔を見せてくれた。
2021.8
古本屋秋風鈴の幽かなり
宇都宮市にある古本屋igno… book plusさんの入り口には風情ある風鈴が吊り下げられている。
本と風鈴、この相性がとても好きである。
2021.9
鈴虫の迷い込みたる台所
御勝手から迷い込んだのであろうか、明らかに家の中からの声なのである。
2021.10
ぱりぱりと枯葉踏む足リズミカル
先日枯葉を踏む音をフィールドレコーディングしてみた。世の中は豊かな音で溢れている。
2021.11
山眠る青月高く仰ぎ見る
音のない静まった世界。
2021.12
賑わいを聞き居る庭の福寿草
お正月に親戚が集まり賑わう家の庭に咲いている福寿草。
まるで笑い声や話声を聴いているよう。
2022.1
冴ゆる夜に靴音響く帰り道
その日受けた感動を噛みしめる寒い夜の帰り道。自分の靴音だけが寄り添うように響いていた。
2022.2
富士見台子の声響く桜かな
富士見台に登ってお花見をしていたら、風に乗って下の原っぱで遊んでいるこどもたちの声が運ばれてきた。
2022.3
春雷や夕闇を裂き藍深む
雷の多い街宇都宮は「雷都」と呼ばれます。
2022.4
水菜切る手に瑞々しさの伝はりて
新鮮な野菜を「ざくざく」と切る。
音や手に伝わる感覚は、それだけでもご馳走。
2022.5
夏の霧六甲山に響く笛
植物写真家で音楽家のいがりまさしさんは夏毎年、白馬と六甲で演奏活動をされています。霧深い山の中で聞こえてくる笛はとても神秘的。
2022.6
雨音を枕に眠る七夜月
枕にできそうなくらい、やわらかくて心地よい雨の降る音。
2022.7
言葉なくサイダーの泡見つめゐる
黙った二人。炭酸の「プチプチ」という音が聞こえるくらい静か。
2022.8
はらはらとわが身にまとひ銀杏散る
紅葉の季節、降ってくる銀杏の葉も美しく輝いている。
2022.9
花嫁のベールはためく秋麗
晴れの日、ガーデンウェディングの花嫁。風にも祝福されているよう。
2022.10
風光りぶつかる竹の音さやか
風に揺れてぶつかる竹の音のなんと潔いことか。
2023.5